“「No」と言える日本は絶対に必要 日本はマティス国防長官に独自の安保ビジョンを提案すべきである” (ハフィントン ポスト 2017年 1月 25日)

ハフィントン ポスト

“「No」と言える日本は絶対に必要 日本はマティス国防長官に独自の安保ビジョンを提案すべきである”

2017年 1月 25日

エマニュエル・パストリッチ

1989年に石原新太郎が「Noといえる日本」という本を出版して非常に話題になった。その当時、日本に留学中だった私にはあまり興味の持てない内容であった。この本のなかで石原が唱える政策が有用であるとは今でも思わないが、しかしながら、今の日本には「Noといえる」精神が必要ではないかと思う。

トランプ政権は、中国がアメリカに対して執拗な敵意を持っているために、交渉相手にはなりえないという前提のもと、去年、オバマ大統領と習近平主席が合意した気候変動に関する協力関係を反故にするなど、躊躇なく 挑発的な発言をしている。

アメリカのマティス国防長官は今週の水曜日に東京を訪れ、北朝鮮の脅威を名目に、日本の防衛省を訪問する予定だが、その本音は間違いなくアメリカ、韓国と日本が手を組んで中国に軍事的に対抗しようという内容であるだろう。トランプ政権が、尖閣列島と南シナ海をいつでも軍事的に対応可能な地域にしようと力を注いでいるのは事実である。しかし、トランプ政権は、明らかにアメリカ合衆国を代表するものではなく、連邦政府の一部のみを代表する勢力にすぎないのである。

次期国務長官に内定したレックス・ティソンとホワイトハウスも、南シナ海にある島の領有権を主張している中国に、その島から撤退させるよう、アメリカが積極的に対応することを提案した。

このような発言は、あまりにも扇動的なので、彼らが頭の中だけで考えているのではないかと疑う人も多い。しかし、彼が主張していることは明確である。これは、戦争宣言であると言っても過言ではないのである。

日本はマティス国防長官に対し、外国政府の代表として礼をつくす必要はあっても、協力する必要はない。

日本がその未来について慎重に考えるなら、このようなトランプ政権の提案に対し断固として「NO」と言わなければならない。日本は中国と長い間、密接な関係を結んできており、ビジネス、学術研究、地方自治体やNGOなど、あらゆるレベルで日本にとって有益な交流が数多く行われている。

中国と経済的な関係を更に緊密にし、友好的な関係を維持・発展させることは、日本の発展にとって必要不可欠である。

しかしトランプ政権は、アメリカがまったく領有権もない南シナ海において、国連を無視して 中国を牽制するための 軍事的な対抗策に乗り出すだろう。 本当は、世界各地で起こる領土紛争を管理し、解決する方法は他にいくらでもあるのに、である。

アメリカは、東アジアの安全保障に積極的な役割を果たすことができ、中国はそのような役割に反対してはいないということを明確にしなければならない。

中国が敵であるという論理は、愚かな軍国主義者たちが作り出した、理にかなわない見解である。中国は単純な国ではない。世界の人口の6分の1が中国人なのだ。中国は殆どの国際機関において既に主要なメンバーであるだけでなく、最近の中国は、海外での活動において、アメリカよりも遥かによく 国際法に従っているのである。

この文章は時事についての軽い論説ではなく、誰より深く日米関係について考え抜いてきた者としての発言である。

私が1987年にイェーイル大学を卒業して日本に行ってまもない頃、エドウィン・O・ライシャワー大使が私の所属していたアメリカ人留学生の集まりにちょっとした激励の挨拶をしに訪れたことがある。その当時の私は文部省留学生として、日本古典文学の研究に励んでいたが、ライシャワー大使が私に言ったことは、古典文学に集中しながらも、現在の日米関係を常に意識すべきだと言うことだった。

あれからちょうど三十年が経つが、私は忘れることなくライシャワー大使の言葉を覚えている。ライシャワー大使はハーバード大学の燕京研究所の所長を務め、多くの人に日本文化を紹介した。それだけでなく、駐日アメリカ大使も務め日米経済、安保、外交にも大きく貢献した。当時の私は彼の足元にも及ばない、未熟な青年であったので、その模範的な姿に深い感銘を受けた。

その後、私は研究に励んで、東京大学の比較文学研究室において日本語で日本漢詩文学についての修士論文を書き、さらにハーバード大学の燕京研究所で江戸時代の小説についての博士論文も提出した。さらに、上田秋成、荻生徂徠、伊藤仁斎について研究しながらイリノイ大学とジョージワシントン大学で十年のあいだ、日本文学の教授をした。アメリカの学生に日本の素晴らしい文化を紹介することは、私にとって光栄でもあり幸せでもあった。

私は今もなお日本との交流を盛んに行っているので、たびたび日本語で文化と外交について発表したり、文章を書いたりする。トランプ政権にいる誰よりも、日本を大切に思っているアメリカ人である。

トランプ政権の政策方針が、軍事力強化に向かっているにもかかわらず、日本人がそれに深い疑問を抱いても、受身な態度でワシントンからもたらされた提案を受け入れている。反対する論理は、日本政府には全く準備されていない。日本側には他のビジョンを提案するより、あまりにもマンネリ化した日米関係の惰性にしがみつく傾向があるようにさえ感じる。

また、戦争する国家ということで、明らかに日本の国益にならず日本の国家主権も反している場合には、平和憲法9条だけを強調していてはいけない。

→また、戦争も辞さない国家で、明らかに日本の国益にならず日本の国家主権にも反している相手に対して、平和憲法9条だけを強調していてはいけない。(の意味か?)

日本の教育水準は非常に高く、技術の領域のおいては常に創意的な革新をしている。にもかかわらず、軍事戦略、安全保障、先端技術の軍事的利用については、ワシントンのシンクタンクが生み出す理論と常識を盲目的に真似ているのは皮肉なことだ。日本人は、アメリカにおいて「安保」というのは、「濡れ手に粟」のビジネスであることに気づいていない。日本人は十分に独自の安全保障の研究ができるのであるが、実際には、そのほとんどが輸入品である。

戦争する国より「安保」を定義する国へ

日本がわれわらが直面している現実にもとついて日本なりの安全保障ビジョンを出すには、 最近国際社会の傾向を 深く考えてそれに応じて新しいビジョンをマティス長官に 出すべきだ。科学的な視点を持って今の安全保障問題を客観的に分析すれば数多くの人が納得できる反論が十分に可能である。

今や技術は前例のない速度で進化している。2年ごとにコンピューターチップの性能が二倍に進化するという「ムーアの法則(Moore‘s Law)」が、世の中を大きく変化させている。このような急激な変化は、とても予測できない部分もあれば、安保分野のように甚大な影響を及ぼすであろうと予測できる部分もある。

確かに将来の安保問題は、今までとはだいぶ性格が異なるであろう。そのため、どのような手段を使用するかについて再考が要求されるのは当然である。でも今のところ日本の政治家、公務員、学者が「安保」を考えるには 非常に可能性の低い北朝鮮の核兵器攻撃を仮定として 軍事準備には莫大な資金を投入しながらも、気候変動のように生死の問題に直結する問題へ取り組む機会は、逃しているのである。

安保問題の解決には多国の協調が必要で 、今度は前時代の暗黙的な想定や、安保概念の偏狭な偏見を超えて韓国、日本、中国、そして、アメリカが 互いに緊密に議論していかなければならないが、その際、注意しなければならない点が二つある。

第一に、今後の技術変化が、不必要な武器体系を生み出す要因になる可能性を追及しなければならない。また、軍事的なイシューについても、より慎重に再考する必要性を常に疑うべきである。もしかすると、これは今まで想像してきた伝統的な民族・国家の域をはるかに超えるものかもしれない。

第二に、普遍的な倫理観を以って、破壊的な潜在力を持つ次世代の武器体系の開発を制限するべきか、それとも、一層厳重な武器制限条約を作ることによって、より厳しく規制するべきかを考慮しなければならない。そして、気候変動に対する適応や緩和に必要な費用を考慮した場合、果たして今後、20年間、従来型武器の費用を賄う予算があるのかについても、問いただすべきであろう。

今こそ、人類の貴重な資源が人類生存に不可欠な基本的条件に効果的に使用されるよう、武器を制限し、禁止する厳重な合意案を作るべきではないであろうか。

技術は安保の本質をどう変えるのか

果たして最新技術が今まで武器体系が担っていた重要な役割を代行し、それによって軍事紛争の本質は変わるのであろうか。

我々自身は人の本性をよくわかっているつもりでいても、実はよく分からないものである。だから将来、人間同士の争いがなくなったり、戦争抑止の必要性がなくなるだろうと仮定してはならない。一度に多くの人を殺傷できる技術は日に日にコストが安くなっているし、しかもこのような技術を小規模集団や個人さえも手に入れやすくなっているため、これにどう対応していくかを、絶えず考えておく必要がある。

しかし、将来、急速に解体しつつある民族・国家の間で、戦争が勃発するのかどうかは確かではない。また、昔、紛争の解決のために使っていた武器が、そのまま将来にも役に立つかどうかは不確かである。

今後、我々が最も考慮すべき重要な変化は、1) ドローンやロボットの出現、2) サイバー戦争の精巧さ、3) 3Dプリンターや、その他非伝統的手段を駆使した物体伝送方式の出現、この三つである。従来の軍隊は、戦車、戦闘機、ミサイル、軍艦及び航空母艦などによって構成されており、これらはみな高価なばかりでなく、新たな武器にはとても脆弱である。

ドローンやロボットの場合、現在の技術力はまだ原始的なレベルではあるが、今後、世界を大きく変えるであろうと期待されている。もちろん、ロボットの潜在力を過小評価してはいけないが、今後、ドローンがこの変化を主導していくことは確実である。今後、ドローンは一段と小型化して、俊敏性を増すであろう。ひいては、ミクロの大きさにまで縮小され、ドローンの自己調整能力さえも可能になる時がくるであろう。

今後、ドローンの攻撃力が向上すれば、双方の抑止が働くであろうが、数千機もの超小型ドローンによって莫大な被害がもたらされる未来を想像することも、そう難しいことではあるまい。

ロボットは、今後、より大きな役割をするであろう。現在、致命的な攻撃を制御できる立場にまだ人間は立っているが、ロボットによる自動化のせいで、そうした制御に参加できる過程から人間が外されることになろう。そうなれば、罪のない民間人に対する被害はますます多くなることに決まっている。すでに一生懸命に働いている、この殺人マシンの設計者たちが、アシモフのロボット工学の倫理に関する三原則をこれに適用する可能性は、まずないであろう。

また、サイバー戦争は、我々に巨大な挑戦をもたらすことになる。いとも簡単に、敵であるわれらの武器を奪い取り、サイバー機能を利用してわれらにわれらの武器を使う 可能もあろう。そのため われわれハッキングすらできない在来の武器体系へ戻らなければならないことになるかもしれない。

また、サイバー戦争は、バーチャルリアリティ、ゲーム、公告、それから宣伝や芸術等と結合して、複雑な連続体を形成することによって、それを統制、または抑制しなければならない深刻な挑戦をもたらすであろう。若者がゲームに催眠され、戦争が来ることさえわからなくなるのはいま戦争戦略のひとつ重要な一部になっている。

しかも、このような能力は、民族·国家ではなく、特定勢力に悪用される可能性が高く、よって国際的な広範囲にわたる衝突につながる可能性もある。また、我々が今まで保持してきた国家安保政策の基本方針は、例外なく近代国家間の戦争を前提として計画したものであったが、これからの 葛藤、または紛糾においては、この国家安保に関する最も基礎的な概念が違ってくることになるでだろう。とても不安定で分裂した国際社会の秩序のもとでは、一般市民はそれを民族·国家間の戦争だと見なしても、戦争は国家間の争いへと展開して行かない可能性が高い。

3Dプリンティングは最先端技術であり、軍事的用途に関してはどのように使用されるか、今のところ、完璧に予測することは難しいが、既に産業の版図を変える重要な技術として見なされているのは事実である。3Dプリンティングは、3Dプリンターに提供されるデジタル情報により、以前の技術では製造できなかったもの、例えば、武器をも含めた色々な機械装置などを作り出す可能性を提供している。3Dプリンティングは、過去20年間の工場で行われてきたCNCルーティング、ミーリング、押出成形及び切削加工技術の拡張ともいえるが、その規模や普遍性といった点においては、比べ物にはならない。熱可塑性樹脂の小さな水玉を作って立体的な物体が作れる、理論的には、3Dプリンティングを使用すれば物流を介さずに、周りにある材料で武器を作ることが可能になる。

現在、アメリカや日本がこの新技術を先導しているという理由だけで、今の状況が維持できると過信してはならない。アメリカはドローン、サイバー戦争及び3Dプリンティングの使用に関する厳格な条約の締結がなされるよう、最優先的に政策を推進しなければならない。なぜなら、この技術は日々、価格低下が進み、他の国が短期間で世界市場を制圧することも可能だからである。これは既存の国家政府や正常な組織にとって決して有利な状況ではない。

今後、ますます民族や国家の分裂を目の当たりにすることであろう。サイバー戦争は、仮想現実、ゲーム、広告、宣伝及び芸術と複雑に絡み合っており、この特異な連続体の管理、取締りはとても難しく、深刻な問題になるのは間違いない。我々は、すでに存在する武器体系に絶対的信頼をおいてもならないし、既存の武器がもはや目的を果たせなくなったとすれば、果敢に放棄しなければならない。単に金銭的利益やプライドの維持のために特定の防御体系を維持することは、無責任なことである。

安保論争を変える気候変動

伝統的な軍事技術が正当化されるとしても、我々は、気候変動に適応し、これを軽減するのに莫大な費用がかかることや、従来型武器を持続的に開発する費用がもうすぐ無くなるという事実を、素直に受け止めなければならない。

我々は、人間の生存を脅かす気候変動の急速な進行状況を考慮した場合、安保の概念を全面的に考え直さなければならないのである。これからは、ガス排出の減少、汚染された水質や土壌の浄化、そして、森やその他の自然を復元するのに、根本的な支出を増やしていくしかないであろう。

わかりやすく言えば、これ以上、従来の軍費支出に必要な資金は残っていないということである。結局のところ、費用を賄うことができないという現実的な理由により、軍事兵器を大幅に削減する国際的な軍備統制体系を構築するしかないのである。

好むか好まざるかは別にして、世界中で核兵器を廃絶して、戦闘機、戦車及びその他の従来型武器を大幅に削減する合意案を結ばなければならない。なぜならば、我々は、まったく新たな経済を再構想する必要に迫られているからである。現在、情報機関、軍隊や外交のために使用される経費のほとんどが、今後は気候変動による深刻な問題を解決するのに使用されるであろう。そして、これは直接、経済計画に反映される厳しい監視のもとで、実行されなければならない。もちろん、海軍、陸軍、情報機関などは、それぞれに矜持があって、今手にしている膨大な予算を簡単に手放さないと考えるかも知れない。しかし、気候変動の問題に向かうことで、軍隊や情報機関の役割が根本的に変化するなら、別の矜持やプライドが軍隊や情報機関に生まれる可能性は十分にある。そうなった時、そうした軍隊や情報機関をどう呼べば良いかが新たな問題にもなろう。しかし、それは大した問題ではない。大事なのは名前でなく中身、すなわち役割の根本的な変革である。

このビジョンは理想主義者の立場ではなく、むしろ、ほとんどの人が考えようともしない現実を直視する実用主義者の立場と認めるべきだ。安保の脅威に真摯に立ち向かうのが軍隊の義務である。気候変動のような、安保を脅かす重大な要因をも解決できない武器体系を導入するために、巨額の契約を結んだり、高額を支出したりすることは、もはや軍隊の義務ではないのである。

核戦争による人類の破滅

技術の幾何級数的な発展は、安保の概念を根本的に変えてしまい、人類史上、前例のない新たな脅威を生み出している。これはある程度、予測可能だった部分でもあり、国連の設立を始めとして、戦争を終わらせようとするいくつかの努力の背景にもなってきた。しかし、完璧な世界を追及することよりも、核兵器時代の到来やその他の破壊的な武器などによる戦争被害が拡大したため、今や一般的にも核兵器を絶対に規制しなければならないという認識が広まった。

これを最も明確に訴えた人物が、アインシュタイン博士である。1955年にラッセル=アインシュタイン宣言が出た時、その宣言の中には、「さて、ここに私たちが皆さんに提出する問題、きびしく、恐ろしく、そして避けることのできない問題がある-即ち、私たちは人類に絶滅をもたらすか、それとも人類が戦争を放棄するか?」といった表現があったことを想起してもらいたい。

今や、核戦争による人類の破滅はまだ起こってないとしても、その脅威は益々増大している。そして破壊的で、しかも手に入れやすくなった新武器の登場により、この脅威は徐々に現実味を増しているのである。反面、技術の急激な発展に伴い、気候変動という、より大きな脅威が発生した。我々は、社会の発展により多くのエネルギーを消耗するようになったが、残念なことに、生態系に及ぼす影響はまったく考慮しなかった。

戦争を引き起こす能力や武器の開発、それらの使用を真剣に制限するためには、組織化された高度な国際システムが必要である。ここで言う国際システムとは、国連で構想した「包括的核実験禁止条約(Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty、略称:CTBT)」や、「核拡散防止条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons、略称:NPT)」などのようなものと、同様である。

たとえ、現状がこれとは反対の方向に向かっており、アメリカが次世代の核兵器を開発するために10億ドルを注いでいるとしても、希望を捨てる理由にはならない。アメリカが従来型武器と核兵器の境界を曖昧にする小型核装置を開発して、核戦争の可能性を高めているという事実は不安材料ではあるが、だからといって、これが世界の終焉を意味しているわけでもない。

マティス国防長官が今週東京を訪問する時にこのように包括的な安全保障戦略を提案し、中国との軍事衝突を断じて拒否すべきである。日本人が勇気をだして、果敢に反対の方向に進むべき時なのである。それは本当の安保のためでもあり、日本が世界の本当のリーダーの一員になる道でもある。

 

「韓国は「第2のIMF危機」可能性に備えるべき」 (中央日報 2017年 1月 27日)

 

 

中央日報

「韓国は「第2のIMF危機」可能性に備えるべき」

2017年 1月 27日

エマニュエル パストリッチ

 

 

失業、破産、輸出減少などに対する最近のデータを見てみると、韓国経済状況は1997年の国際通貨基金(IMF)危機の時よりも悪い。

  今回は先進国経済が当時よりも不安定で、経済民族主義の勢力が強まっているため緊急救済金融を得るのは並大抵のことではない。ギリシャの事例から判断すると、多額の借金すれば国家の主権がかなり深刻に損なわれることになる。

  韓国に救済金融を提供する余力がある国は中国だが、中国は現在、高高度ミサイル防衛(THAAD)体系の展開を決めた韓国に対して怒っている。韓国最高のネゴシエーターたちをもってしても救済金融交渉の妥結まで途方もない難関が予想される。

  そのうえ、韓国人を政治的に納得させることができる外国救済金融はない。韓国は自力で資本を形成し、改革も遂行していかなければならない。

  驚くべきことに、韓国がいかにしてこの危機に立ち向かうかに対する議論が国内メディアの間では見られない。韓国が何をするのか、またどのように韓国の経済体制全体を改革するのかについて、タブーを破って公開的な討論を開始するべき時がやってきた。

  銀行から見てみよう。米国のいわゆる「銀行」は、投機的な活動に一段と没頭している。例えば、会社が自社株を再購入して会社の価値を高めるのを助長している。また、国家経済や市民の安寧とは何の肯定的な関係がない派生商品のような、あらゆる「ダークな」金融商品に関与している。

  銀行改革に着手するために金融崩壊を待つ必要はない。一次的に最も重要なのは、銀行が高度な規制の中で、非常に予測可能で極めて「退屈な」存在にならなければならないという点だ。

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“蝋燭を灯す韓国の若者へ” (ハフィントン ポスト 2017年 1月 25日)

ハフィントン ポスト

“蝋燭を灯す韓国の若者へ”

2017年 1月 25日

エマニュエル・パストリッチ

青年の皆さん、

私達(この文章は私とアジアインスティチュートの丘芸倫璘 研究員が一緒に書きました)は手に蝋燭と直接作ったポスターを持って光化門広場に集まった皆さんを見てとても感銘を受けました。大学生もいたし, 高校生, さらに中学生もいました。

市民達が街に出て、法による支配と責任政治を求める姿はすごく崇高なものでした。そこには政治意識の鼓動が遠い国まで鳴り響いていました。

メディアでは平和なデモだと称賛し、今や韓国は民主主義の模範国家になったと褒め称えさえもしました。

しかし朴槿恵大統領が弾劾し、その友人のチェスンシルが刑務所に入ったからと言って全てが終わったと言う訳ではありません。これから新しい挑戦が残っているのです。

 

反動わった市民革命

1960年4月26日にも韓国である大統領が辞任しました。李承晩大統領が学生達と市民達の要求に押され辞任した時、学生達は歓呼し、新しい民主政府が始めると期待しました。しかし学生達は情勢を良く知らず今後どの様な政府を築き、どんな政策を推進するかについての明確な計画を立てていませんでした。

彼らは李承晩辞任後の権力空白期間を利用して誰かが権力の簒奪を狙うという事実を知りませんでした。張勉総理は明確なビジョンを持たずして危ない政治ゲームにばかり没頭していました。その結果はよくご存知だと思います。

朴正熙という利口な若い将軍が軍隊内の不満勢力を募って1961年5月16日にクーデターを起こしました。その後数十年の間、韓国は民主主義とは遠くかけ離れました。

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「光化門を見てみなさい、韓国国民は一流の国民だ。 なのに国会が二流、三流でいいのか」 韓国国会議長:丁世均インタビュー (ハフィントンポスト2017年 1月 5日)

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「光化門を見てみなさい、韓国国民は一流の国民だ。 なのに国会が二流、三流でいいのか」 韓国国会議長:丁世均インタビュー

2017年 1月 5日

エマニュエル・パストリッチ

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丁世均(チョン・セギュン)議員は、昨年6月の選挙で、弱体化していた保守派のセヌリ党に民主党が勝利したとき、国会議長になった。丁氏は、バランスの取れた人格を持ち、感情には簡単に動かされないが、政界内で調和の取れた関係を作ることに長けた韓国政治界の重鎮であり、機関の構築に情熱を持っている。朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴訟以降、韓国政治をリードしていく中心人物として浮上した。

筆者は、韓国の現在の政治的危機と、そこにある挑戦と可能性について、丁氏と話す機会を得た。韓国国民の衆目を集めている男として、彼はおそらく、韓国の政界を正確に評価するのに最もふさわしい人物だろう。

 

エマニュエル・パストリッチ:

政府の日韓軍事情報保護協定締結もTHAADと同様、政府が決定に急ぎすぎたことが国民の怒りを買っていますが、この問題に関してはどうお考えですか。

丁世均:

この問題の重要性や波及効果は、THAADとは比べものにならないでしょう。しかし、過去に日本は正しくないことをしたにもかかわらず、今も過去に対して正直に認めず、謝罪をしてないので、小さな疑惑でも感情的にとても大きく見えるのが事実です。そのため、これが問題になるのです。

また、この問題もTHAADと同様に、きちんとした論議や正当な手続きを経ずに、ことを急ぎすぎてしまったために問題が生じてしまった。この協定締結には情緒的な問題と手続き的な問題があるのです。それに後遺症と言いましょうか、今のところは表に表れていない問題が後に発生するかもしれません。ですから、おそらくしばらくすればこの問題は治まると思われますが、私はこのような国政運営が繰り返されるのは望ましくないと思っています。

エマニュエル・パストリッチ:

政府はTHAADの配置も急いでいますが、これに対して議長の立場をお聞かせください。

丁世均:

私は以前にもこの問題について指摘をしたことがあります。それは韓国にTHAADの配置がどうしても必要だとしたら、まず議会での議論を経て、それからTHAADの配置の候補地として挙げられてる地域の住民とも十分な協議をしなければならない。また、利害関係のある近隣諸国とも慎重に議論をしてから、問題が生じないようにしてからことを進めるべきだということです。

また、これを国内で推進する場合は、民主的な手続きを守らなければならない、と主張したことで、ひどく反対されたことがあるのですが、私はそれを進めるか、止めるかということより、過程がもっと重要だと思っています。

民主的な過程を通した決定ならば、たとえそれがいかなる結論に達したとしても、我々はそれを認めなければならないと考えます。したがって、第一に、その政策を推進する過程が民主的でなければなりません。そして、THAADの問題は国会の同意を得なければならないと私は思っています。

ところが、政府は国会の同意も得ずにこれを勝手に決定してしまった。これは間違っています。

大韓民国憲法で、外国との条約や重要な試案については、国会で批准(同意)を得ることになっているのですが、その重要な試案のうちの一つが財政の負担なのです。

国民が払った税金が投入される事業は国会の同意を得ることになっています。なぜなら、国民が負担しなければならないのですからね。ですから、経済的な負担がある部分に関しては必ず国会の同意を得ることになるのですが、このTHAADの問題について現政府は、「必要な用地をキャッシュ(お金)で購入するのではなく、政府が保有している他の土地と交換するのだ」と言っているのです。

キャッシュ(お金)はかからないとしても、実質的には政府のプロパティー(資産)が他の人にトランスファー(移転)されるのだから、これは国民の税金が使われるのと同じです。したがって、国会の批准を得なければならないというのが私の考えです。そして、国会で議論をして、国会の同意を得られれば配置をし、同意を得られなかったら配置を中止するのが正しいと、私は思っています。

エマニュエル・パストリッチ:

中国の韓国産製品、及び、文化コンテンツの規制、次期アメリカ政権のアメリカ優先主義など、外交分野でもさまざまな問題が山積みだと思います。このような状況の中で国会は何か対案を模索中でしょうか。

丁世均:

私は韓国が原則を守る努力をするしかないと思っています。アメリカは韓国の唯一の同盟国でありながらも、中国とは経済的な利害関係が最も大きい国であります。ですから、両国は共にとても重要な国であることには違いがありません。

したがって、いかなる事案に関してもどうするのが正しいか、また、どうするのが合理的か、そして、その原則をしっかりと立てて、力によって振り回されず、正しいものがあれば、その問題を真摯に、かつ誠意をもってきちんと説明して理解を求める努力をし、そして、正しいほうに進んでいくしかないと思います。そうしないと両者とも満足させることはできませんからね。

最大限に誠意は見せるが、国家的な利益や国際規範、また常識的に正しい方向に進んでいくしかないと、私は思います。

エマニュエル・パストリッチ:

最近、国定歴史教科書の現場検討本の公開をきっかけに、国定歴史教科書の廃止を訴える世論が沸いています。歴史的な脈略から国定教科書問題を考える場合、この問題はどのように解決されなければならないとお考えですか。

丁世均:

私は本来、国定教科書という発想自体が間違っていると強く主張してきました。なので、これは政派的な考えや理念的な次元の問題としてではなく、未来世代への教育、そして、歴史を認識する妥当な視点、こういった次元から捉えるべきではないかというふうに思っています。

したがって、今の韓国の水準から見て、歴史教科書を国定化する必要は全くなく、国定教科書の時代は既に過ぎたということで、国定ではなく検認定教科書にすべきだと思います。それに、国民の大多数が国定教科書に反対し、検認定教科書に賛成しているので、現政府は国定教科書を早くあきらめるべきだと、私は思います。

エマニュエル・パストリッチ:

最近、毎週末、ソウルで開かれる大規模なろうそくデモが世界中の多くの市民から注目を集めています。この大規模なろうそくデモへの市民参加は、アジアだけでなく世界でも稀な活力のある韓国の民主主義精神を反映するケースだと言えます。これに関してはどう思われますか。

丁世均:

これほど大規模な集会が開かれて、これといった事故も起こらず、まったく平和的で、また文化的な要素までもが加味された形で行われていることには、私も驚いています。おそらく、世界の人々はもっと驚いていることでしょう。崔順実事件のせいで恥ずかしい思いをしたのですが、これでカバーできたと思っています。

私は、アジアの他の国の人や世界の人々が韓国を訪れたときに「見よ、これが韓国の民主主義だ!」、また「見たか、これが韓国市民の水準だ!」と、自負しながら話したいくらい本当に画期的なことだと思っています。また、他の議員たちにはこういうふうに話をしています。「光化門を見てみなさい、韓国国民は一流の国民だ。なのに国会が二流、三流でいいのか。国民の水準に国会がついていかなければならないではないか。」と。これは私の本心です。

そのパワーを韓国の未来の希望に、そして、特に若者の失業や両極化など、我々が抱えている様々な問題を解決するのに上手く活用できれば、と思っています。また、そうすることで韓国国民が皆、共に暮らして行ける国になれると期待しています。

エマニュエル・パストリッチ:

韓国は大統領選挙という、重要な歴史的ターニングポイントで新たな指導者を選出することになるのですが、今後、韓国の指導者にはどんなことが要求されるでしょうか。

丁世均:

次の大統領は、新たな時代、例えば、4次産業革命など、我々の目の前に差し迫る新たな時代を理解している人でなければならないと思っています。

それから、韓国を一段とレベルアップさせるビジョンや戦略を持っていなければならないと思います。世の中は今、以前とは違う超スピードで変化しています。今までは上手くやって来ましたが、これからは今までの方法だけではやっていけません。ですから、新たな変化を能動的に感知して、それに対応できる、また、新たな戦略を打ち出せる有能な人物が指導者にならなければならないと思います。

それに、今の韓国社会は少子高齢化問題や若者問題が深刻なのですが、若者の失業や住居など、若者問題についてアイデアを持ち、解決の方法を提示して実践できる、このような人物でなければならないと、私は思います。

エマニュエル・パストリッチ:

議長は、とても合理的で、健全な政治的見識のお持ち主だと知られていますが、今年起こったブレキジット(イギリスのEU離脱)やトランプ当選などから考えてみますと、今後、韓国の保守や進歩も過去のような姿勢では、刻々と変化する政治的要求を受容することができないと思われます。今後、保守や進歩陣営は、どのような点を補完していかなければならないと思いますか。

丁世均:

簡単ではない課題ですね。韓国は「スモール・オープン・エコノミー」と言われており、パートナーと上手く協力してきたのですが、結局、自らが競争力だと言いましょうか、東洋では「自強」と言いますね。自強でなければ、情勢が激変し、多くの困難が混在する状況の中で、自分の地位を守るのはそう簡単なことではないでしょう。

そのため、科学技術をはじめとして、全ての面において、我々は強力さを失うことなく、今まで懸命に積み上げてきた技術をより一層強化させることこそが、混沌する国際情勢の中で韓国が生き残れる道だと思っています。したがって、韓国人の勤勉性や情熱、また、想像力をより一層高める努力が必要であり、そのためには、優秀な指導者が必要だと思います。

そして、今年の大統領選挙で本当に優秀な指導者を国民が選択することで、国際社会から尊重され、韓国と共生しようとするパートナーが多く集まるようになる努力が必要だと思っています。

エマニュエル・パストリッチ:

今後、アメリカの次期政権をトランプ大統領が引っ張っていくことになり、韓国の対外貿易政策路線に関しても多くの人が大きな関心を寄せています。貿易に関して韓国は今後、アメリカの新政権とどのような立場で協議を進めていくべきでしょうか。

丁世均:

政治の論理をもって、しばらくのあいだは、一定の状況を維持することができるでしょうが、長い目で見てみると、結局は経済の論理によって左右されるものですから、先ほども申し上げましたように、韓国が競争力を維持する限りは、ある特定の指導者が何と言おうとも、韓国はこれからも国際貿易において自分の役割を維持していけると思います。

こうした問題を政治や外交で解決しようとせずに、経済に集中して、自らの競争力を維持することこそが危機を克服できる道だと思っています。例えば、「Made in Korea」の製品がクオリティもよく、プライスも手ごろならば、アメリカの消費者もトランプ大統領の思惑に反して、それを購入することでしょう。直接購入する方法もありますし、アメリカの企業もそれを買って消費者の要求に答えようとするでしょうし、必ずしも大統領の言いなりになるとは限らないでしょう。

エマニュエル・パストリッチ:

最近、朝鮮半島を取り囲む東北アジアの情勢は、とても緊迫な動きを見せています。南北の対峙問題を含めて、北朝鮮の核問題によって触発された国際社会の制裁や南北間の緊張状態の高潮、及び、韓国国内の政治的変動において北朝鮮の変数などはどのように見ていますか。

丁世均:

北朝鮮の人民も、韓国の力動性にとても注視していることでしょう。

私は、以前からずっと言い続けてきましたが、北朝鮮の核問題は必ず解決せねばならないと思っています。韓国だけでなく、北朝鮮のためにも核開発はよいことではありません。ですから、北朝鮮の核をなくすよう懸命に努力しなければなりません。ただ国際社会の制裁だけでは解決にはならず、対話が必要だと考えます。

したがって、制裁と対話を平行することで、北朝鮮の問題を解決する方法を見つけなければなりません。制裁はあくまでも対話を引っ張り出すための手段であって、制裁自体が目的になっては行けません。北朝鮮の人民や政権に辛酸を与えるのは核問題のせいであって、彼らが苦しむ姿を見て楽しみたいからではないのです。そのため、私は制裁と対話を並行せねばならないと考えるのです。

エマニュエル・パストリッチ:

議長がお考えになる「与野党協議体」とはどのようなものでしょうか。

丁世均:通常、国会には国会なりの立法部門の役割があり、政府にも政府の役割がありますが、今は大統領の権限が制限された緊急事態であり、しかも私たちは国内外の多くの問題にも直面しています。

そのため、特段の対策が必要です。これを野党は与野党協議体と呼んだり、国政協議体と呼んだりしています。国会の本来の機能は、政権を牽制し、監視することにあります。同時に、法案も作成します。

ところが、大統領に過度に権限が集中しているのが実情であるため、国会の多くの役割の中で牽制と監視の役割をさらに強化すべきだと考えています。また、現在、我々が直面している懸案の解決に国会がより積極的に参与するべきです。そのような次元で最近の言葉で「協治」をしよう、ということです。

現在、交渉団体が4つありますが、与野党間、そして国会内で4つの交渉団体間及び立法府と行政府間の協治する必要があります。ここから与野党協議体のアイデアが出てきましたが、このようなものが必要だと私は考えます。そしてそうした努力を通じて国の緊急事態を克服し、私たちが直面している状況が正常化されるまでの時間を無駄にせずに活用しようというのが趣旨です。

つまり、緊急時に対応する国会と政府、そして大韓民国の機関の協治の努力が必要であるということです。

エマニュエル・パストリッチ:

韓国ではこれまで改憲問題も提起されてきましたが、今回が改憲の機会だという話もある一方、改憲は「第3地帯」などの権力分割のための手段だという指摘もあります。これに対する議長のお考えをお聞かせください。また改憲の方向はどのようになるとお考えでしょうか。

丁世均:改憲は、まず、国民的な共感が基本であり、その土台の上に、国会の各政党が合意をしてこそ、スムーズに改憲が行えます。今はもう、早期選挙が行われることがほぼ確実なので、その前に改憲をすることは容易ではないでしょう。ですが、今年国会に改憲特別委員会が設置される予定です。つまり、政治家側にとって現在の判決、大統領選挙、弾劾は粛々と進行していくものであり、一方で、改憲プロセスはまた個別の議論が行われ、別に扱われるものなのです。

「第3地帯」とは、既存の政党から離脱して、新しく作られたグループのことを指します。この新しいグループは、2政党が推進する方向とは別に自分たちの勢力を育てて、自ら執権しようとするもので、その可能性は常にありますが、現在勢力を得ているとは見ていません。

彼らはもともとこのような弾劾事態がなければ、勢力を拡大するつもりでしたが、弾劾事態が生じたため、彼らもそう時間的な余裕がなく、おそらく難しいでしょう。前述したように、憲法裁判所の弾劾決定と新たな早期大統領選挙という一面と、憲法改正というもう一つの側面がありますが、憲法改正が一体いつになるのかは誰にも分かりません。

いつになるかはわかりませんが、私のもともとの目標は私の任期中に改憲をすることです。そして、改憲の重要な要素は、第一に、分権です。大統領の権限を縮小し、その権限を立法府や他の機関に分け与える水平的分権です。そして、地方分権は垂直分権と言えるでしょう。

中央政府が持っている権限の一部を地域に分け与え、国民の基本権の問題であれ、環境問題であれ、持続可能な成長であれ、さまざまな問題がより広範囲に改憲に反映されることを望んでいます。いわゆる権力構造のみに留まらず、過去30年間の大韓民国の多くの変化や発展が、そこに反映されるような改憲になればと思います。

もともと崔順実(チェ・スンシル)の事件の前に、国民の約60%は改憲に賛成、30%はしなくても良い、残りの10%は分からない、といった世論でしたが、崔順実スキャンダルにより、多くの国民、特に知識人が、「これだから帝王のような大統領制はダメだ。これは政治家の問題ではなく、制度そのものに問題があるのだ」と、批判しており、憲法から制度の見直しを迫られています。

なので「ろうそくデモ」というのは、崔順実一味に罰を与え、大統領をやめさせることが最終地点ではなく、政権を変えることに対して新たな選択肢を作ることも含んでいるのです。民心がそうだといえば、新しい大韓民国を作るために、国会が変わらなければならず、検察も改革され、全般的な改革が必要になるでしょう。

それに加え、「これまで議論されてきた改憲が成し遂げられるべきであり、それこそが根底にあるべきじゃないか」という考えが広がっているため、改憲の雰囲気は成熟していると考えます。

エマニュエル・パストリッチ:

早期の大統領選挙、憲法改正などをはじめとするいくつかの問題と現在の状況を総合的に見て、国会議長として弾劾にどのような感想をお持ちでしょうか。

丁世均:

国会での弾劾決定に与党のセヌリ党62人が賛成したということは、国民の世論を反映したものです。国民78%が弾劾に賛成しましたが、国会の採決も全く同じ結果です。これを見ると、国民の世論がそのまま立法府に反映され、国会議員をも動かしたと解釈できます。

弾劾問題はすでに憲法裁判所に進んだため、憲法裁判所で比較的迅速に、賢明な判断が下されると思います。しかし、憲法裁がどのような決定を下すかはまだわかりません。国会議員らは、改憲においてゆっくりと、しかし、正当な方法で、国会で議論をしなくてはなりません。「ろうそくデモ」の市民は、国会で弾劾決定がされ、憲法裁判所に進んだので様子を見てみよう、と考える国民もかなり多いようです。

しかしながら、国民は必要であればいつでも自分たちの主張を再度行う姿勢です。重要なのは、国政の懸案、例えばインフルエンザ問題や、経済的な危機、慣行的な行為をはじめとする外交安全保障問題によく対処しながら、政治的なプロセスは、プロセス通りに、そして民主的で平和的で穏当に、整然とうまく解決していくことだと思います。

また、政治家が選挙の勝利のために努力するのは自然なことです。私たちが直面している困難や大韓民国の未来について努力し、また大統領選挙に出馬しようとする人々は、国民の支持を得るために努力をして、それぞれの分野のすべての韓国国民が自分の当面の課題に取り組めば良いと思います。

ですから、大統領選挙に出馬しようとする人々が正当な競争をして、国民の審査を受ければ良いのです。その過程で、自分たちのビジョンを提示し、それを競わせ、国民の評価を受けて、本当に良い指導者が出ればと思います。また候補者たちができればネガティブ・キャンペーンをするよりも、自らのビジョンを戦わせて、国民にアピールすることで、国民の支持を得る努力をしてくれればと思います。

時間があまりないですが、良い公約をたくさん打ち出して国民にアピールし、国民の支持を得る、といった建設的なキャンペーンが行われることを期待しています。

エマニュエル・パストリッチ:

国政協議体で議長はどのような役割をするお考えでしょうか。またどのような議題を早急に扱わなければならないのかお聞かせください。

丁世均:

いろいろありますが、民生経済が第一だと思います。第二は、北朝鮮の核問題を含む外交安全保障問題です。民生経済と外交安全保障問題について、政府がこれまで見逃した部分がないか、そして政府を助けられる部分はないか、といった議論をして国政の革新的部分が滞りなく運営されるように、議会と政党が役割をして欲しいと思います。

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“THAADの悲劇” (ハフィントンポスト2016年 12日 24日)

ハフィントンポスト

“THAADの悲劇”

2016年 12日 24日

 

エマニュエル パストリッチ

 

 

 

去る7月8日、韓国国防省と在韓米軍は、'THAAD'(Terminal High Altitude Area Defense missile, 戦域高高度防衛ミサイル)の在韓米軍への配備を正式に決定した。私はこのニュースを聞いてとても残念に思った。これまで色々な誤解はあったにせよ、韓米両国は、軍事同盟によって、北朝鮮の軍事的脅威に立ち向かうべく、協調してきた。しかし、今回の決定は、何の科学的な根拠もなく、また、しかるべき論議も行われることなく、電撃的に下されてしまったのである。

実際に、今回のTHAAD配備の決定は、ミサイル防御システムの効用性を疑う、多くの専門家の意見を受け入れずにして下された。韓国政府の今回の決定は、どうしても潜在的な経済的利益を念頭においたものと見えるのだが、これは正に、百数年前、第一次世界大戦の悲劇をもたらした国際武器商人の戦略に似ている。

まず、THAAD自体のミサイル防御能力が、旧式のシステムであるということから指摘したい。THAADは、高高度に飛来するミサイル対してその威力を発揮するものだが、北朝鮮が韓国を攻撃するにしても、高高度のミサイルを発射する必要は、まずない。北朝鮮が数万人の韓国人を殺傷するにためには、ミサイルではなくとも、直接砲撃だけで十分なのである。ソウルは北朝鮮の保有する放射砲の射程圏内に入るからである。

結論的に、北朝鮮の放射砲は、THAADで迎撃する必要などないのである。しかも、既に色々な非効率的なミサイルシステムの戦略が構築されており、THAADが高高度ミサイル攻撃に対処するミサイルであるとすれば、これはミサイル攻撃体系を強化しようとする中国を刺激するだけである。

大陸間弾道ミサイルの脅威に対処する唯一の方法は、ヨーロッパに安定をもたらしたSALT(Strategic Arms Limitation Talks、戦略武器制限交渉)のような軍備制限条約を結ぶことである。1970年代の初めから冷戦関係にあった東西の両サイドは、お互い一致しない様々な理解関係を三つの協議によって調整した。モスクワとワシントン間での核兵器協議、CSCE(ヨーロッパ安全保障協力会議)での政治・経済的な論議、そして、ヨーロッパでの軍備減縮及び相互軍備減縮協議がそれである。しかし、今日のアメリカは、東北アジアにおける軍事的緊張関係の緩和のために、そのような接近方式は全く考慮していない。

今回の決定が、何よりも平和に無心であることは大きな不幸である。実は東北アジアの平和を脅かす一番の原因は、ミサイルや核兵器類などではない。

この決定の悲劇はそれだけではない。 実は東北アジアの平和を脅かす一番の脅威はミサイルや核兵器類実態ではなくて緊張した環境である。 アメリカを始めとして、東アジア全域に非核化体制を成立させ、平和を振興したら、武器を使用する危険を減らせるだろう。

しかし、無人航空機技術は、速い速度で発展しており、今や世界の安全を脅かす脅威にもなっている。しかし、無人航空機を利用した、未来の戦争を遂行する主体は、国家自体でもない。しかも、我々は、未だに無人航空機に関するいかなる類の協約さえも議論したことがない。無人航空機は、東北アジアの武器競争構図を悪化させるだけである。

それに、何よりも、我々が恐るべきことは、気候変動による脅威、例えば、海水面の上昇、砂漠地域の拡大などによって、地球上の全ての国にの、数千万にも及ぶ人々は潜在的な混乱に陥るということである。今後、最も費用がかかるのは、おそらく、化石燃料を減らし、燃料消耗の少ない生産設備を導入した社会基盤施設を構築し、それによる政治的、社会的基盤を整備することである。今こそ、アメリカ、中国、日本、ロシアを始めとする国々が、気候変化に対処する長期的な方案などについて協調し、共通のアジャンダの確立に努めなければならない。

韓国としては、ワシントンDCの、惰性に染まったシンクタンクから出た、THAADのような誤った決定に順応し、翻弄される暇はない。我々には、このようなことに没頭する余裕もなく、万が一、このような武器競争が加速される場合、韓国は一番の犠牲者になるであろう。東北アジアの気候変化やそれによる脅威に韓国が断固とした態度で臨み、解決策を見出そうとする意志を見せた場合、そして、この問題について韓国が他の国々を包容する意志を見せた場合、アメリカだけでなく、韓国もまた案外多くの支援勢力の支持を得られることであろう。

しかし、韓国が誤った情報を根拠に、金銭的な、もしくは政治的な利益だけにとらわれて、昨今のような近視眼的な政策を続けるならば、ますます不必要な経費を支出するばかりか、結果的には、子孫の反感を買うだけである。

 

「気候変動の解決は日本の高度経済成長の戦略と精神にあり」 (ハフィントンポスト エマニュエル パストリッチ)

ハフィントンポスト

「気候変動の解決は日本の高度経済成長の戦略と精神にあり」

2016年 12日 5日

 

エマニュエル パストリッチ

大野健一の著書『途上国ニッポンの歩み-江戸から平成までの経済発展』は、英語にも翻訳され海外でも広く読まれている。最近ではマレーシアなどの発展途上国が日本の高度経済成長を手本にしていることも話題になっている。

確かに、1960~70年代に成し遂げた日本の産業化が輝かしいものだったことに異論はない。だが、今日の発展途上国にそのビジョンを伝授することよりも、当時の戦略や精神を日本国内で復活させる時期を迎えていると私は考える。今こそ日本は新たな高度成長を牽引していかなければならないのだ。

今度の高度成長では、鉄鋼、石油化学の設備拡大、電子部品や自動車の輸出など、一世代前の産業に重点を置いてはならない。新たな高度成長は1960、70年代に日本が経験した時よりも断然に速いスピードで進んでいくはずだろう。しかし、何よりも気候変動というとてつもない脅威に、その都度対応できる日本の技術及びインフラ整備のノウハウの集積に集中しなければならないのだ。

以前の高度成長期の精神や長期的なビジョンは必要だが、方向性は正反対でなければならない。脱石油、脱石炭よりもまず有機農に重点を置いて、伝統の持続的な経済体制を一日でも早く回復することを目的にしなければならない。

TV、洗濯機、冷蔵庫の三種の神器の代わりに、低価風力や太陽光パネルを一日でも早く義務化し普及させ、先進技術を活用した完璧な住居の建築、石炭、石油、原子力の依存から脱却した「東洋の奇跡」の再現を目指さなければならないだろう。

もちろん、新しい経済体制を発展させるためには、昔の知恵を活用しなければならない。例えば、高い教育水準を利用して経済発展を成したように、市民の教育水準を向上させて、特に環境に関する教育や環境管理、環境技術の発展に関連した教育を活発に進めていかなければならないだろう。ただし以前と異なり、農業分野を大事に育てていかなければならないことになる。

以前、日本は、玩具、繊維、自転車、オートバイ、自動車、飛行機から半導体に至る先端技術の開発のため精細でかつ長期的な計画を立て実行していた時期があった。日本政府は専門性を確保し、インフラを構築すると同時に、この技術自体に対する理解やそれに加えて、それによってもたらされる変化にも対応できる体系的な人力養成プログラムを行っていた。

しかし、最近日本は「第5期科学技術基本計画」で科学技術に関する長期的なプランを立て、施行したものの、残念なことに国家的事業の統合的なアジェンダとして機能できずにいる。この基本計画は、日本社会や経済体制を根本的に変革する総合的な計画というよりも、単なる生産効率性や世界市場の攻略に重点を置いているだけなのが現実だ。

しかし、気候変動対策及び有害汚染物質の排出やエネルギー消費の削減など、今日当面している大きな変化は、過去の経済や技術開発に匹敵するほど重要な課題として浮上してきており、日本としてはこのような変化に向き合いながら、経済及び技術開発などの計画を再編成する必要がある。

私は、以下の三つの観点を基盤にして、未来を予測し計画を立て実行していく新たなアプローチ法を提案したい。

第一に、10年、20年または30年後の日本の自然環境がどうように変化しているのかを考えなければならない。海水面がどれだけ上昇するのか、干ばつの程度と頻度、そして台風や津波などの巨大な自然災害は将来どのように変化していくのかを熟考しなければならない。また、地質や緑地、農業や海洋の生態系はどのように変化するのかなども考慮すべき重要事項である。

第二に、現在の技術開発の方式がいつまで有効なのかという問題である。これは、現在の技術開発がいつ全面的に無炭素方式に代わるかという問題と関連している。今までの技術開発方式は無炭素方式とはかけ離れており、これによる環境への脅威は憂慮すべき水準だからである。

第三に、未来の気候変動による脅威に対処できる技術開発のインフラをどれだけ先制して構築することができるかが問題である。

我々は、まず2021年までに全てのビルに太陽光パネルと効果的な断熱設備を導入することを目標にしなければならない。この計画は、産業、学会、政府、技術、流通、教育などの各分野、そして地域社会の積極的な参与を誘導できるように都市再生事業と連携がなされなければならない。

具体的には、窓ごとに薄膜太陽電池や先端の断熱材が迅速に導入されなければならない。この他にも、太陽や海水面の上昇などの巨大な自然災害に対する備え、または緑地や海洋生態系及び地質改善なども念頭に置いて計画する必要がある。

この長期的な計画は、単なる生産や輸出ではなく、気候変動の脅威に日本がどのように対応するかにかかっている。特に、島国である日本にとっては、海水面の上昇は他の国々よりも差し迫った脅威である。したがって、海水面の上昇や地球温暖化に対応することは、当然日本の国家的安保アジェンダの中心に置かなければならず、市場中心の思考から一日も早く脱却しなければならない。

長期的な計画のためには資金確保も重大な問題である。この資金は気候変動による国家的対応に基づいた公的資金でなければならず、いかなる方式であっても、私益の投機性資金ではその使い道に期待することはできない。

つまり、現在の危機は半導体、自動車、鉄鋼及び石油化学産業が日本にいかなる未来を招くものなのかを問いただし、新たな未来を描いていかなければならないことを意味しているのだ。未来を予測し計画することで気候変化の脅威を集中的に考慮しなければならないのである。

政府は、決断力のあるリーダーシップを発揮し、戦争時にありとあらゆる技術力を結集して対応するように、気候変動という長期的で巨大な脅威に対応しなければならない。この問題を聖域化し対応を先延ばしにすることは許されない。

政府は、産業全般にわたって化石燃料の依存度の減少や断熱材の普及を達成させる5ヶ年ごとの計画を立て、実行するべきである。何よりも重要なことは、こうした計画がきちんと日本の企業文化やマインド、政策などを十分に考慮し、目標に向かってより早く変化できるようにデザインされていなければならない。

また、他の産業国よりも早く達成することで、日本が他国の模範となり、世界に日本の威信を見せつけられる価値のあるものになりえるだろう。

当面、二つの5ヶ年計画が必要だろう。一つは、気候変化を受け入れるためのもの。そして、もう一つは、それによってもたらされる脅威を緩和するためにだ。この二つのプランはどちらかが欠けてはならないし、成功するためには両者が緻密にリンクしていなくてはならない。

この計画は、日本の文化や慣習、通念に変化を要求するものであるし、日本の金融、貿易、投資ポリシーの変革も避けられないだろう。しかし、これが成功すれば、石油輸入を外国に頼り、石油資本に隷属する歴史は終わり、世界中の手本になることだろう。

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科学技術都市間の生態都市連合

 

科学技術都市間の生態都市連合

(エコ・シティ連合) 

ECOCITY ALLIANCE OF SCIENCE TOWNS

PALO ALTO (UNITED STATES), TSUKUBA (JAPAN) & DAEJEON (KOREA)

パロ・アルト(米国)・つくば市(日本)・テジョン市(韓国)

2009年 1月 1日

 

コンセプト

今日、ごみの減量化、エネルギー消費の縮小、世界的気候変動への積極的な働きかけ、市民の健康および都市空間の居住性の改善といった、生態学的な観点からの持続的発展の可能な都市環境への欲求が増大しています。 しかし国家を横断した都市間でそのような変革を達成しようとするならば、我々は市民の支持を取り付けた効率的機能用件の必要性に対し、特に関心を示す国々とともに、エコ・シティのモデルとなるいくつかのモデルの確立を鋭敏にかつ迅速に目指さないとなりません。それらのエコ・シティは、ごみ処理・用水管理・自然公園・野生動植物の保護区域・代替エネルギー・絶縁体、交通環境問題など極めて現代的あり、ほとんど環境に負荷をかけない手法を取り込んだ次世代エコ・シティの創造のために講じられるであろう、国家努力のあり方を示すヒントとなるでしょう。

最先端のエコ・シティにとって最適の場所は、第1に、大都市よりコミュニティをすばやく変化させることが可能である、比較的コンパクトな都市です。第2に、その都市は、エコ・シティに関連したすべての分野にわたる最も高度な研究に容易にアクセス可能できることが求められるため、科学技術団地のある地区が存在していることが望まれます。

最後に、環境変動の脅威がグローバルな問題であることから、研究団地から入手可能なテクノロジーを周辺地域から調達し、エコ・シティのモデルを発展させるための努力がグローバルな努力へと結びつくことが求められます。比較することは、すなわち、互いの戦略に関して意見を交換することであり、いくつかの都市間での最先端のエコ・シティを発展させるコストを分担することで相互に大きな利益を得ることができます。さらに、異なる国家間の協調という国際的要素は、国内的にも世界的にもそれらの成果に多くの国々が関心を抱くことになるでしょう。

 

参 加 者

 

前述した理由から、エコ・シティ連合の中核となる3つの都市は、スタンフォード大学を抱えシリコンバレーの中心にある米国のパロ・アルト (Palo Alto)市、KAISTの本拠があり韓国の科学技術をリードする大学と諸研究機関を抱える韓国のテジョン(大田)市、筑波大学が設置され, AISTなど科学研究機関を複数かかえる 日本のつくば市からはじめられることが、望まれます。これらの都市は、より大きい地下鉄都市(サンフランシスコ、東京、そしてソウル)に近く、優秀な専門家と研究設備をかかえ、次世代エコ・シティを設立するために必要なすべての分野と関連しています。

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“「中国の夢」:欧米化?それとも新しい道を開く?” (ハフィントンポスト 2016年 11月 23日)

ハフィントンポスト

“「中国の夢」:欧米化?それとも新しい道を開く?”

2016年 11月 23日

エマニュエル・パストリッチ 

 

 

最近、会議のため南京へ行くことになった。あの有名な「夫子廟」へ連れて行ってほしいと案内係の学生さんにお願いした。南京は初めてなので、下町の昔ながらの喫茶店でお茶を飲みながらのんびりしたいと思った。

今回南京に来たのは初めてだったが、明の時代まで「金陵」と呼ばれた「南京」のことはよく研究していた。東京大学とハーバード大学で中学文学を勉強したとき、南京を舞台にした詩集をたくさん読んだ。十七世紀の散文雑記で描かれた秦淮河のきれいな景色に印象深く、大学で小説『紅楼夢』を読んだときも、十八世紀の南京の軒を連ねる邸宅が何度も頭に浮かんでいた。

しかし、賑やかな街を歩いて昔の金陵の風貌を探そうとした私の努力は無駄だった。夫子廟辺りは昔の建物が既に取り壊され、ファーストフード店や洋服屋の入っているつまらないコンクリート造建物が立ち並んでいる。確かに上質なお茶を売っている店も何軒かあるが、そこで売られている食べ物やお土産はバンコク、ロサンゼルスのとほぼ変わらない。結局、南京製のものには一つも出会わなかった。詩人、小説家どころか、匠、職人の姿までいつの間にか消えていた。

夫子廟のなかも昔の風貌がなくなった。石壁や土壁の代わりにコンクリートの壁が溢れている。大工さんの腕が悪く、壁と床のつなぎ目がいい加減に仕上げられていた。置かれた家具の作りが悪く、壁に掛けられた絵画があり溢れたものばかりだった。

あの日、南京ではパリのノートルダム大聖堂や日本奈良の東大寺で拝見したような心を動かされる歴史の跡には出会えなかった。南京の過去はすべての中国人が勉強しなければならないとある本の中で読んだ気がしたが、街中を歩いてみたら、その華やかな歴史文化は今の南京とほぼ関わりなくなったように思われる。

案内係の学生さんのおかげで昔風の喫茶店が見つかった。喫茶店を出たとき、悲しい気持ちで胸がいっぱいになった。中国の歴史伝統が次から次へと消えていく。これは文化大革命のせいではなく、消費文化の激しい成長が招いた結果と言っても過言ではない。そしてこの悲しさは確実で深いものだった。

しかし最も悲しいのは、古代中国は持続可能な有機農業によって世界一のシステムを作り出し、国の複雑な官僚制度を支え、多くの人々を養えてきたにも関わらず、その素晴らしい有機農業の伝統が捨てられてしまった。アメリカ農学者フランクリン・ハイラム・キング(F• H• King)がその著書『東アジア四千年の永続農業-中国・朝鮮・日本』(Farmers of Forty Centuries, or Permanent agriculture in China, Korea, and Japan)で、東アジアは確実な永続農業のモデルを作り出しており、アメリカはそれを導入すべきと呼びかけている。一方、中国は致命的な化学肥料と農薬を取り入れたせいで、農業は持続可能なものでなくなった。古代中国の農業文明の素晴らしい知恵が最も必要とされた今、その跡取りが見つからない。

また、消費社会の残酷な価値観の反面、中国人の素朴、節約、親孝行、謙遜の人柄がとても魅力的に思われるが、これらの美徳を求めに中国にきたら、あなたはきっとがっかりするだろう。

 

米化の夢

 

欧米文化が受けている悪い影響を減らし、そのあり方を求めるために、多くの欧米人が中国に訪れてくる。同じ目的で、アメリカ社会を支える制度を蝕んでいる物質主義と軍国主義に絶望感を持つ私は、中国文学を勉強することになった。中国の儒学、仏学及び道学思想は、人間のすべてを金銭で評価するアメリカに新しい基準を提供している。

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 「韓国に「未曽有の大嵐」も 朴政権支持率急落と米大統領選で」  YAHOOニュース

 YAHOOニュース

エマニュエル・パストリッチ インタービュー

韓国に「未曽有の大嵐」も 朴政権支持率急落と米大統領選で」

2016年11月10日

 

共和党のドナルド・トランプ氏が、メディアの大方の予想を覆して、米大統領選を制した。友人による国政介入疑惑で、朴槿恵政権の支持率が急落する中、「アメリカ・ファースト」を主張するトランプ氏の当選は、同盟国である韓国の政治・経済にどのような影響を与えるのか。米ハーバード大学で博士号を取得し、ザ・アジアインスティテュートの所長を務める、慶熙大学のパストリッチ副教授は「朴政権のレームダック(死に体)化とトランプ氏の当選で、韓国に「パーフェクトストーム(未曽有の大嵐)が吹き荒れる恐れがある」と警鐘を鳴らした。
――友人による国政介入疑惑で窮地に陥っている朴槿恵政権について
韓国の歴代政権は、ことごとくスキャンダルに見舞われて任期後半に支持率が低下するが、今回は、そこにいろいろな要素が重なり合っているのが特徴だ。
まずは、今回のスキャンダルで、李明博大統領から続いた保守政権が10年で終わる可能性が高くなった。さらに、歴史を遡れば、1960年に選挙の不正が明らかになって下野した李承晩政権とも類似点が多い。左翼勢力が強く、当時も学生や市民による大規模なデモが発生した。
トランプ氏が次期米大統領に当選したことで、米国は第2次世界大戦後から続いた「世界の警察」の役割を大きく縮小するだろう。経済的には保護貿易主義が一層台頭しそうだ。韓国にとっては、輸出中心のビジネスモデルの行き詰りも意味する。輸出に力を入れて経済を大きく飛躍させた故朴正煕大統領の娘の政権で、輸出主導の経済が大きな転換点を迎えたのは皮肉だ。朴槿恵政権のレームダック(死に体)と相まって、韓国に「パーフェクトストーム」が吹きあれる恐れがある。
――トランプ氏の当選を予想していましたか?
可能性は十分にあると思っていた。2001年9月11日の米同時多発テロ以来、米国はアフガニスタンやイラクで戦争した。今も、シリアなどで問題を抱える。「もう他国に干渉したくない」という心情は十分に理解できる。関係が悪化するロシアとの軍事衝突を心配する米国人が多いと聞く。彼らは「トランプ氏が当選すればロシアとの衝突を当面回避できる」と判断したのではないか。
――今後の日韓関係について
トランプ氏は、米国内の政治を重視するとみられる。そのため、東アジア問題の細部に気を配ることはないだろう。例えば、従軍慰安婦に関する日韓合意に関心を持つとは考えにくい。日韓は今後、両国に横たわる問題を主体的に解決しなければならなくなる。(聞き手 坂部哲生)

<プロフィル>
エマニュエル・パストリッチ:東京大学で修士号、ハーバード大学で博士号をそれぞれ取得。専門は東アジアの古典文学など。著書に「韓国人だけが知らない別の大韓民国:ハーバード大学の博士が見た韓国の可能性)」(21世紀ブックス)などがある。

 

 

 

「韓国学と韓国の公共外交」 中央日報 2016年 10月 1日

中央日報

「韓国学と韓国の公共外交」

2016年 10月 1日

エマニュエル・パストリッチ

  私が1983年にエール大に入学した時、アジアについて学ぶことを望んだ。結局、中国語を専攻することになり、4年の時に日本語の勉強を始めた。当時、エール大には韓国学のプログラムがなかった。今日のエール大には韓国学のプログラムがあるが、学生は韓国学を専攻にすることはできない。教授が一人もいない。韓国にとって大きなマイナスだ。多くのエール大卒業生が政府や財界で重要な役割を担うが、この人たちは学部の時に韓国文学・歴史・哲学・芸術史の講義を聴く機会がない。

最近、「公共外交法」が通過した。韓国政府に海外の韓国専門家不足を解決しようとする意志があることを示唆する。海外の韓国学研究の幅と深さは中国学・日本学に比べて遅れている。政府の支援資金は米国で韓国学を発展させるのに使われるだろう。しかし「国際社会で大韓民国の国家イメージおよび地位向上に寄与することを目的に」と表現された公共外交法の目標は私を失望させた。

私が中国語・日本語を勉強したのは、中国・日本政府の「国家イメージ向上」とはいかなる関係もなかった。私にとって関心はこの両国の価値、哲学・美学原理だった。韓国料理の広報や歌手PSYのハーバード大での講演は、韓国文化に対する長期的な関心を高めていくうえで効果がないだけでなく、逆効果を招きかねない。韓国を時間の検証を受けた価値体系でなく消費を待つ楽しみ(fun)として紹介するのは効果がはるかに落ちる。韓国は努力すれば深いインスピレーションを受けることができる対象として提示されなければいけない。

フランス・英国・日本は長い植民地支配の歴史を通じて積極的に自国文化の優越性を広報し、植民地の住民を社会的に統制する手段とした。こうした苦い伝統は決して推奨できないが、これらの国のこうした伝統は早期に自国文化に対する神話、神秘を形成した。このゲームを遅く始めた韓国は90年代まで文化の広報に投資していなかった。フランスやドイツより100年ほど遅れたのだ。

日本が武士道の広報に使う「神話」や植民地遺産を背景にした英国・フランスのエリート主義を韓国が避けることができるなら、そしてより参加的な韓国学広報の接近法を開発できるなら、遅く始めたことがむしろ有利に作用する可能性がある。

最も大きい韓国学の問題点の一つは韓国学をゼロサムゲームとして理解することだ。より多くの人を日本や中国でなく韓国語・韓国史を勉強するよう説得するのは重要でない。実際、韓国学を成長させる最も大きな潜在力は韓日中比較研究を増進させるところにある。私も日本文学の教授として韓国学に関心を持ち始めた。

特に前近代期の歴史・文学・哲学・芸術史分野で損失が最も深刻だ。韓国は中国学や日本学の専門家に研究費を支援することで、これら専門家を韓国学に引き込む努力が不足している。しかし中国学・日本学研究者は文語体の漢文で書かれた初期韓国文献を読むことができる。この人たちに韓国に関する注目を引くような研究を遂行させることも重要な目標だ。

ハーバード大と関連する問題もある。私はイリノイ大の教授として7年間在職したが、イリノイ大は米国で最も多くの韓国専門家を確保していた。しかし韓国国際交流財団はイリノイ大でなくハーバード大を支援した。ハーバード大が使い切れないほどの金額だった。学問を発展させるのは学者のネットワークであり、アイビーリーグのような特定大学ではない。研究に重要なのは大学でなく学科だ。

公共外交の問題に戻ってみよう。少女時代は数百万人の心をつかむかもしれないが、そうだとしても意味のある影響力は生じない。韓国の重要性を浮き彫りにし、韓国を正確に理解させるための闘争で戦士となるのは40年以上教える教授だ。こうした教授が韓国について若い頃から知る次世代の指導者を教育する。

韓国学の標準を高めることも重要だ。米国には、韓国の研究をするが韓国語を話せない学者が多い。フランスやスペインを研究する学者のフランス語・スペイン語レベルに相応する韓国語レベルを学者に要求しなければいけない。学生や教授は厳格なプログラムを尊重する。韓国語を一言も話せない人たちがワシントンで北朝鮮について「説教」するのは韓国に役立たない。

韓国学をお金で買うことはできない。お金だけでなくビジョンが必要だ。韓国国内大学で文学・芸術史の教授の席を減らせば、海外の韓国学にもマイナスの影響を与える。韓国文化・言語という基礎を無視して韓国経営・経済研究を支援するのは致命的な失敗だ。

最後に強調したいのは学問の自由だ。日本は米国内の中国学・韓国学を牽制するために日本学支援に1500万ドルの予算を投じたが、日本が自国のプラスのイメージを広報し、不都合な真実を洗浄しようとしているのではという疑惑を買っている。韓国は米国の学者が米国に最も合う方向で韓国学を発展させられるようにしなければいけない。